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日本全国で寒波に見舞われ、寒さに負けっぱなしの今日この頃。
見るだけで一層寒さを助長するような、あるいは季節が違えば一服の清涼剤になるような、そんな絵画を紹介したい。 Hammer Museum (ハマー美術館)で開催していた展覧会"The Idea of North: The Paintings of Lawren Harris"は、カナダを代表する風景画家Lawren Harris(ローレン・ハリス、1885-1970)のアメリカにおける初の大規模回顧展。主に1920〜30年代にかけて制作した油彩画の代表作30点余りを展示している。 Lawren Harrisはカナダの雄大な大自然を描いた画家として、カナダ国内では切手のデザインや教科書に採用され、カナダを代表する画家として国民に親しまれているが、隣国アメリカでは、ほぼ無名の画家である。 ちなみに展覧会のパネル説明に「タイトル"The Idea of North"は同じカナダ出身のピアニスト、Glenn Gould(グレン・グールド)から拝借した」と舌足らずな一文が。 補足説明を加えると、Glenn Gould(1932-1982)は偉大なピアニストなのは言うまでもないが、当時急速に発達したメディア(録音・ラジオ・テレビ)を利用することに非常に長けていた。北への憧れ、厳しい自然と共にカナダ北部の辺境の地に暮らす人々への畏敬の念をこめて、1967年にラジオドキュメンタリー "The Idea of North"(北の理念)を製作する(インタビュー音源を複数重ね、波や風の音も交錯させた「実験的で複雑なオーケストラ楽曲」のような作品)。 Glenn Gouldもカナダや日本では絶大な人気を誇るが、ロサンゼルスにいて「好きな音楽は?」というお決まりの質問に「Glenn Gouldの演奏するバッハ」と答えると、知っている人が皆無なのには毎度驚かされる。 単にクラシック音楽に疎いだけなのか、地続きとはいえ政治の表舞台にあまり登場せず影が薄い隣国の音楽や絵画には関心がないのか、自国以外の国への相対的な無関心さ故なのか、アメリカは何とも不思議な国である。 だいぶ脱線してしまったが、話を戻すとLawren Harrisは、カナダの風景画家たちで結成した「グループ・オブ・セブン」(1920-33)の創始者のひとり。旧態依然としたヨーロッパの写実的な絵画様式から脱却し、カナダの大自然と真摯に向き合うことで、カナダ独自の芸術を確立できるという信念のもと、精力的に風景画の制作に取り組んだ。 代表作のひとつMt. Lefroyはカナディアン・ロッキー(ロッキー山脈のカナダ側)を有するバンフ国立公園(Banff National Park)を描いている。 雪面が強風で削り取られてできた、シュカブラと呼ばれる雪紋が極限まで単純化されているのだが、この削ぎ落とされた造形が、波・流水・霞など日本の伝統的な文様のデザインを想起させる。 着物の図柄や琳派の花鳥絵に見られる、花や草木、鳥、波などの自然を単純化させる手法にも通じていて、日本人としては大いに親しみが持てる。 手前のこんもり丸い山々、おしくらまんじゅうでもしているような三角の山々、その後ろにもくもくと湧き上がる白い雲は、大自然のデフォルメかパロディー、あるいはほぼマンガである。自然の厳しさの角が全部取れたような山のフォルムに親しみがわく。 一緒に鑑賞していたカメラマンは「ニューヨークの摩天楼みたい」と評していた。後で思い返すと、この評はなかなか鋭い。というのも20世紀初頭からアメリカン・モダニズムがニューヨークを中心にアート界を席巻し、ちょうど1920-30年代の画家は誰もが皆新しい手法を追い求め、抽象表現が興隆を極めていた時代でもあった。 「モダン・アート、アメリカン:珠玉のフィリップス・コレクション」展(2011年、国立新美術館)を観に行った時も、摩天楼が実に様々な表現方法で描かれていた。 Edward Bruce "Power" (ca. 1933) Charles Sheeler "Skyscrapers" (1922) Stefan Hirsch "New York, Lower Manhattan" (1921) オスカー・ブルームナー(Oscar Bluemner)、マースディン・ハートリー (Marsden Hartley)、ジョージア・オキーフ(Georgia O'keeffe)、エドワード・ホッパー(Edward Hopper)など、アメリカのモダニズムを牽引した画家たちを引き合いに出されるのも仕方ないところがある。 フランスで印象派が台頭した時は誰もが似たような筆致で絵を描き、それ以前は写実一辺倒だった。モダニズムで抽象表現というのも、20世紀初頭のアメリカ大陸における、ひとつのスタイルだったのだろう。 しかしLawren Harrisはカナダの大自然の描写を深く突き詰め、新しい風景画のあり方を模索した。そのオリジナリティー溢れる作風は、先に挙げたアメリカを代表する画家たちに決して引けを取らない。 光と影、色彩のコントラストを強調し、造形を単純化させることで幾何学的な抽象画に落とし込んでいる。古代遺跡のようにも、ビルのような建築物にも見える。筆者にはピアノの鍵盤のように見えた。見る人によって印象が変わる氷山。 それにしたって、なんか猛烈に寒いんですけど、この部屋。たまらず近くに立っている監視員のお姉さん(たぶんUCLAの学生)に訊いてみる。 著者:「いつもより部屋が寒いような気がするんですけど。絵の雰囲気に合わせてわざと空調を効かせているのですか?」 監視員のお姉さん:「うーん、どうかしら。ぶっちゃけ、ここはいつでも凍えそうなくらい寒いから〜」と爽やかな笑顔で答えてくれた。 視覚による体感温度が低過ぎて、半袖では長いこといられそうもない展覧会。猛暑日に行くと確実に涼しくなれそう。 ちなみに本展覧会を企画したのは米俳優のスティーブ・マーティン(Steve Martin)。日本ではコメディアンとして一番知られているだろうか。脚本や小説も書く。そして知る人ぞ知るミュージシャンの肩書き。バンジョーの演奏歴は50年以上と長い。そしてあまり知られていない現代アート・コレクターとしての一面も。所蔵するのはEd Ruscha, Edward Hopper, David Hockney, Lichtenstein, Picassoなど。 多芸多才なSteve Martinがキュレーターとして展覧会を紹介している様子は、上でも紹介しているHammer Museumの展覧会サイトで見ることができる。 「オークションカタログで初めてLawren Harrisの絵を見た時は、無名の画家を発見したぞ!と興奮したけど、考えてみればアホな話で、絵には値段もついてるし、もうみんな知ってるよね」と、ひとりボケツッコミする場面はコメディアンらしいが、その他は至って真面目に絵について語っている。Steve Martinの普段見られない知的なトークが印象的。 木の幹がうろになって残り、風でも吹きさらしていそうな荒涼とした風景に、日の光が差し込む様子が何か救いのようで、自然崇拝や精霊信仰といったアニミズムの精神が感じられる。カナダの荘厳な大自然を力強く描いた風景画からは、Lawren Harrisが他でもないカナダの美しい自然をこよなく愛する画家だったことが伝わってくる。
by azzurrotree
| 2016-01-31 03:44
| Paintings/西洋絵画
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