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京都市美術館で開催していたダリ展に行ってきた。現在は東京の国立新美術館にて巡回展を開催中(2016年9月14日〜12月12日)。
サルバドール・ダリ (Salvador Dali, 1904-1989) は有名過ぎるので詳しく説明しないが、スペイン出身の画家でシュルレアリスムを代表する画家であり、現代アートの先駆けとしても知られている。 10年ぶりの大規模展覧会という話だったので、大いに期待して行ったが。 絵もジュエリーも代表作が無くて期待外れ、人ばかりやたら多くて閉口。 シュルレアリスム絵画に移行する前の初期作品や、舞台美術や衣装のデッサンが多く、ダリ研究者か玄人向けかと思うほど地味な展示だった。 入り口に再現された「メイ・ウェストの部屋」のインスタレーションが、ダリ展最初で最後の強烈なインパクトがある展示だった。 赤い壁に掛けられた風景画2点、焚き口が二つある暖炉、赤いソファがあるフローリングの洋室だが、所定の角度から見るとハリウッド女優でコメディアンのメイ・ウェスト(Mae West 1893-1980)の顔が出現するという遊び心溢れる仕掛けになっている。 展示パネルの説明不足を補うと、メイ・ウェストは舞台や映画できわどいセリフを連発する戦前のセックス・シンボルで、特に性的な隠喩を駆使したDouble-entendres(二重の意味を持たせた言い回し)でハリウッドのコメディーシーンを席巻した。ついでにメイ・ウェストの部屋を展示するなら、せめて彼女の顔写真くらいパネル説明と一緒に出して欲しかった。 あえて訳出しないが、メイ・ウェストの名ゼリフを少しだけ。 ☆Is that a pistol in your pocket, or are you just happy to see me? ☆Sex is like poker. If you don’t have a good partner, you’d better have a good hand. メイ・ウェストの肉感的な美しさとセクシャルなDouble-entendresを多用した知性に敬意を表して、ダリはダブル・イメージのトリックを使った「メイ・ウェストの部屋」のインスタレーションを構想した。 マグリットやダリはコンテンポラリーアートど真ん中ではないが、それでも老朽化著しい京都市美術館は、斬新なシュルレアリスムの展示に不向きである。部屋も天井もスペースが足りないのはもちろん、照明設備にも不満が募る。展示室もトイレも狭くて大混雑、人の流れも滞っている。 キュレーターも老朽化が進んだ建物に匙を投げているのか、漫然と壁に絵を並べているだけで工夫が見られない。来年から改修に入ることを大いに喜びたい。 東京の国立新美術館なら、十分なスペースがあるので展示の仕方も工夫できるだろうし、人の流れもスムーズで快適に鑑賞できそうだ。ぜひ東京で鑑賞されることをオススメしたい。 - - - - - - - - - - - - そして場所は変わって、ロサンゼルスはロデオドライブで開催中の"Dali Exhibit at Two Rodeo Drive" (2016年6月15日〜9月23日) ダリの大型ブロンズ彫刻12体の展示と、ロデオドライブの一等地に30年以上アート・ギャラリーを構えるGalerie Michaelでの彫刻、オブジェ、ドローイング、絵画、リトグラフなどの展示である。 ティファニーの店舗前にいきなり大型ブロンズ像が出現。 こじんまりとした展示かと思い、あまり期待してなかったが、美術館級の大型インスタレーションに驚き、Galerie Michaelでの作品展示数の多さに二度驚いた。ロデオドライブ全体が美術館になったみたいで、たまたまふらりと立ち寄る幸運に恵まれラッキーだった。 制作年の記述が謎に包まれている。「構想は1979年、最初の鋳造は1984年で、このブロンズ像は後日鋳造」後日って……。ダリの死後に造られたものだろうか。 構想年や最初の鋳造年は多少ばらつきがあるものの、大型ブロンズ像は一様に「後日鋳造」となっている。すべてのブロンズ像は購入可能。 値段は怖くて訊けなかった。 Galerie Michael内にも大型彫刻の展示があった。 さすがロデオドライブの高級感漂うアート・ギャラリー。今回はダリの企画展をしているが、普段扱っている作品は17世紀〜20世紀のヨーロッパの名画と格式高い。 2階は展示用の大きな部屋が3つあり、やたら広い。 メイ・ウェストを発見。 雑誌の表紙にあるメイ・ウェストの写真にグワッシュで加筆して、アパートメントの一室を描いている。 「記憶の固執」(1931)のモチーフを涼しげな青いグラスで造っている。柔らかい時計がハンガーに掛かっているところが楽しい。 野外展示の”Dance of Time I” の小型バージョン。 何かの妖怪みたいな「引き出し女」。 引き出しは「心の秘密」を表していて、すべての女性はミステリアスで美しいという、ダリの女性への賛美が込められている。 「記憶の固執」から溶けた時計の大型ブロンズ像バージョン。 ギャラリーで販売している作品の価格を執拗に書いたのには理由がある。 ダリの展示は美術館よりも実はギャラリーの方が向いているのかもしれない。というのも1939年の時点ですでにアンドレ・ブルトンから「ドルの亡者」と揶揄されるほど、ダリの作品は「商業的な芸術」として成功を収めつつあり、その傾向は1960年代以降顕著になっていく。 1980年にダリがリトグラフ用の白紙に何万枚もサインを入れていたことが発覚して、アート市場を揺るがすスキャンダルになった。 普通、画家が絵や版画にサインを入れるのは、絵を描き終わった後、あるいは版画の制作後であるのが常だが、ダリは1960年代から10年以上に渡り白紙のリトグラフ用紙にせっせとサインを入れ続けた。 白紙に自筆サインをするだけで1枚$40稼ぎ、サインの流れ作業は3人一組で、アシスタントが右からペンの下に紙を滑らせ、ダリがサインし、もう一人のアシスタントがサインした紙を左から引っ張り出す方式で、調子の良い時は1時間1,800枚、$72,000ドルも稼ぐこともあったというから、絵を描くよりも簡単でよっぽど儲かる。 この悪しき慣習はダリの健康状態が悪化する1980年まで続けられた。正に筋金入りの金の亡者である。 サイン入り白紙の数は4万枚とも5万枚ともいわれているが、元ビジネスマネージャーはサイン入り白紙は35万枚あると暴露している。 ダリ本人は後に利用されたと語るが、マネージャーやビジネスパートナーが密かに結託して、大量に横流しされたサイン入り白紙は「本物のダリのサイン入り偽造版画」に化け、市場に出回ることになる。1980年まで堅調に市場価格を上げていたダリのリトグラフや版画は、スキャンダルが明るみに出た途端、一気に価格崩壊してしまう。サインが入った版画は本来限定版のはずなのに、無制限に出回ったら価格が暴落するのは目に見えている。ダリは金に目が眩んで自分の首を絞めたようなもので、自ら作品の市場価格を落とし、アーティストとしての評判を落とし、美術的評価を損ねたのだ。 シュルレアリストとしてダリの才能と創作のアイデアが頂点を極めたのは1940年代までではないだろうか。ロデオドライブに展示された大型彫刻も、デザインは1930年代の絵画の焼き増しだ。もちろん溶けた時計や蜘蛛の足を持つ象、身体に引き出しがある女性はダリの素晴らしいオリジナルで、ダリの作品の奇想天外なイメージは時代を超えて人々に愛されるだろうし、奇才のデザインは商品化に向いている。 ひとつ言えるのは、1980年代以降のダリ彫刻の委託作品とそれを展示販売するギャラリーからは金の匂いしかしない、ということだ。
by azzurrotree
| 2016-09-22 06:26
| Sculpture/彫刻
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