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「ファッションの歴史」と題した展覧会は、婦人服に焦点が当てられるのが常で、紳士服は添え物程度だが、LACMAで開催された"Reigning Men: Fashion in Menswear, 1715-2015" (2016年4月10日〜8月21日) では300年に渡る紳士服の歴史をLACMAが誇る服飾コレクションを中心に、約200点のファッションアイテムで華麗に紹介する。
展覧会のタイトル通り「男性が主役」のメンズウェア大規模展覧会というのは、確かにこれまでありそうで無かったかも。「紳士服」と書くと、地味でお堅いスーツを連想するかも知れないが、300年を振り返る男性の服飾は実に色鮮やかで豪華、ファッション好きなら男女問わず心ときめくに違いない。 本展は次の5つのセクションで構成されている。 ・古きを取り入れ新しきを生み出すファッションのサイクルを歴史的に検証する「革命/進化」 ・国際的な文化交流が紳士服に与えた影響を考察する「東洋/西洋」 ・軍服や作業服といった画一的なユニフォームがファッションに昇華する「制服」 ・男性の肉体美に焦点を当てた「ボディ・コンシャス」 ・紳士服の固定概念や男性性に挑むファッションデザイナー達の功績を紹介する「華麗な男性」 展示は例えば18世紀のフランス宮廷衣装と、現代のハイブランドのコレクションを並べて比較しているが、ここは筆者の独断と偏見でお気に入りのスタイルを勝手にpick up。 18世紀のフランス宮廷衣装を彷彿とさせる丈の短い細身のパンツに、大胆な花柄を施したジャケット。ヴィヴィアン・ウエストウッド初のメンズ・コレクションは18世紀のマカロニファッション(18世紀のイギリスで最先端の流行を取り入れ、奇抜なファッションに身を包む男性を指す)への回帰と、紳士服は格式高く伝統的な仕立てが通例だった1980年代のロンドンのスタイルを否定した前衛的なデザインで世界中を驚かせた。さすがパンクの女王である。 ジャケットとパンツは18世紀の流行だったパステルカラーよりも色味を抑えたモスグリーン。ベストに鮮やかなスカーレットレッドを持ってきて全体の印象をぐっと引き締め、人手がかかる花模様の刺繍の代わりにフォトプリント技術を用いている。 引き続きヴィヴィアン・ウエストウッドから。作業着から始まったデニムがこんなにもエレガントな装いに大変身。繊細なレースを縫い付けたように見えるが、実は濃紺のデニムをブリーチしてレース柄を出している。日本でも着物の染付に用いられる抜染(柄を白く抜く)という手法である。赤いステッチ(縫い目)がエッジを効かせたアクセントになっている。 男性も花柄やレースをどんどん取り入れて欲しい。こういう華があるユニセックスは大歓迎だ。 モンドリアン柄のようなアンサンブルはISSEY MIYAKE MENの若手デザイナー高橋悠介による2014年のデビューコレクションから。日本の伝統的な染色「板締め絞り」の手法を用いている。折りたたんだ布を板で挟んで締めると、板で挟んだ箇所だけ染料が入らず布が白く残るので、まずは黒い染料で格子模様に布を染め、上から捺染(スクリーン・プリント)で青と赤の色を入れている。伝統的な手法を現代のファッションに巧みに取り入れた意欲作だ。 ピエール・カルダンにしては一見地味でトラディショナルに見えるスーツだが、全体的に細身のデザインで大きなラペル(襟)とダブル(二重ボタン)で丈の短いジャケットが女性でも着られそうである。ツイードの生地にカラフルなネップが入っていて何気に可愛い。 再びヴィヴィアン・ウエストウッド。チュニック丈のジャケットに短めのパンツ丈が好バランス。明るいグレーの布地にストライプが交差してチェックが入るデザインが、見事な仕立てと相まって斬新なのにクラシックな佇まい。 「ボディ・コンシャス」のセクションはロサンゼルスらしくセクシャルな展示。 ボディコンというよりアンダーグラウンドのボンデージ・ファッションに近い。ジャケットと革靴でフォーマルな装いかと思いきや、なぜかロープで縛られ、下半身はトランクスのような下着姿(※過激なファッションに見えるが、ロープを除けばロサンゼルスでは実はあまり違和感がないスタイル。一年中気候に恵まれているせいか、外出着どころか、部屋着とも下着ともつかないような格好で闊歩する若者は多い)。服飾にルールは無いことを示す好例。 西海岸のファッションの傾向として「布が少なければ少ないほど良い」というのは、なにも女性に限ったことではない。ジムで鍛えたマッチョな身体を誇示することに喜びを感じる男性にも十分当てはまる。 男性のスイムウェアを展示するコーナーには「極限」の意味が異なる2つの水着が並んだ。 まずは「布が少ない」男性水着。写真右上の展示はワンピース型の水着の後ろがTバック!トップレスの女性用水着も発表したルディ・ガーンライヒのデザインはいつも飛ばしている。 究極に布が少ない男性用水着はグッチのロゴがまぶしいトム・フォードのゴールドに輝くGストリング。もう布ではなくてただのヒモである。 そしてメンズファッションなのか疑問だが、なぜか英Speedo社が開発した競泳用水着レーザー・レーサーが(一応コム・デ・ギャルソンのデザイン)。 2008年の北京五輪時にSpeedo社製の水着を着用した選手が次々とオリンピック記録を更新したことで「テクニカルドーピング」とまで言われ、物議を醸した超ハイテク水着だ。 水の抵抗を極限まで抑えるため着用時の締め付けが強力で、あまりのきつさにジップを上げるのも困難なので、ボディコンやボンデージのセクションにあっても場違いではない気がしてきた(ちなみにSpeedo社水着騒動を受けて、翌2009年に規則が改定され、男子の水着は身体を覆う範囲が臍から膝までになった。展示されているジッパーで締め付けて全身を覆うタイプの水着の着用は現在禁止されている)。 ここであえてSpeedo社の水着を展示することで「水着の進化=布が少なくなること」だけではないと、ロサンゼルス市民を啓蒙しているのかもしれない。 18世紀の意匠と贅を凝らしたテキスタイルを、デジタルジャガード織りで現代に蘇らせるアレキサンダー・マックイーン。シルバーメタルの糸が絢爛豪華な輝きを放つスーツ。 リック・オウエンスの純白のアンサンブルはジャケットとなんとプリーツが入ったドレス。でもボリュームがあるから細身の男性よりも、背が高くて胸に厚みがある男性の方が上手く着こなせるかも。川久保玲の黒でまとめたアンサンブルが普通に見えてくる。 カンドーラと呼ばれる伝統的な中東の男性用装束に、新しい解釈を加えたユニセックス・コレクション。秋冬コレクションなので素材もギャバジン(ウール)で厚みがあるが、ノースリーブで季節感がイマイチ分からない。 マネキンの腕に入ったタトゥーに要注目。ほどよく筋肉がついた腕にバラのタトゥーだなんてロマンチック。Sunset Stripに店を構えるタトゥー・スタジオShamrock Social Clubのオーナー兼トップアーティストMark Mahoneyが彫ったタトゥーである。ブラック・アンド・グレーの巨匠と崇められ、ジョニー・デップやレディー・ガガ、デイヴィッド・ベッカムらセレブたちが足繁く通う有名店だ。美術館にタトゥーがコレクションとして所蔵されるのは、タトゥーが芸術として認められている証である。 ゴルチエのスーツは相変わらず奇抜でユーモラス。服を着ていても、身体の内部までX線で見透かされている感覚が味わえる。 トム・ブラウンのアンサンブルは一見シックだが、パンツの上からなぜかプラスチック製の川釣り用ウェーダーを重ねている。ランウェイでしか着こなせそうもないが、意外に雨の日の通勤に役立ちそう。 ジャケットはミンクの毛皮なのだが、透明ビニールパンツが安っぽく見えるせいか、言われなかったらミンクの毛皮と気づかない。上は帽子から下は靴まで白いリーフ柄で統一していて、コントラストがはっきりしたエレガントなデザイン。ビニールパンツだけが何か謎めいている。 男性の服飾なのに胸踊るコレクションばかり。現代のトップデザイナーやハイブランドがスーツ前史のモードに目を向けた時に、レース、フリル、花柄、華美な刺繍、パステルカラーなど18世紀のフランス宮廷ファッションへ回帰する様は特に興味深い。今では女性の特権のように思われているそれらのモチーフを、18世紀のフランス貴族文化では男女問わずふんだんに服飾に取り入れていたという事実、ファッションに関する性差が少ない時代であったことに、今更ながら新鮮な驚きを感じる。 ユニセックスは黒と白、グレーだけで構成されるものではないことを、本展覧会で思い知らされた。ユニセックスとは性差はもちろんのこと、色や素材、モチーフなどの固定概念から解放されて自由であるべきだと考えを改めた。筆者もつまらない服を着ていてはいけないと自戒。別にハイブランドである必要はないが、服飾が毎日の生活に楽しみを見出し、そして人生に彩りを添える大事な要素であることは間違いない。生き方の方向性ですら変えるパワーを秘めているのがファッションなのだ。
by azzurrotree
| 2016-12-21 18:11
| Fashion / ファッション
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