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新年事始めの展覧会は細見美術館で開催中の『琳派と若冲』展。
俵屋宗達から酒井抱一らに至る琳派と、伊藤若冲の作品を前期・後期併せて約60点ほど 展示。京都にいると新年は若冲を観て、めでたい気分に浸りたくなる。ちなみに昨年は 相国寺にある承天閣美術館の『館蔵の屏風絵展』で宗達・等伯・若冲など堪能してきた。 若冲以外で目をひいたのは鈴木其一 (1796-1858)。展示数は少ないが、卓越した描写と 鮮やかな色彩に見入ってしまう。鈴木其一は、江戸琳派を興した酒井抱一の一番弟子。 琳派の装飾的な画法を受け継ぎつつ、空間に余裕がある構図にモダンを感じる。 さて、肝心の若冲だが展示数は20点弱。水墨画がほとんどで、着色画はほんの数点。 大胆な構図、鋭い観察眼に裏打ちされた緻密な描写力、なによりその独創性に人並み外れた 画才を認めるものの、ここに展示されている若冲は残念ながら「残り物」の感が否めない。 若冲と衝撃の出会いを果たした2006年の『プライスコレクション: 若冲と江戸絵画展』 (東京・京都・福岡・名古屋を巡回) があまりにも傑作揃いで、つい比較してしまうのだ。 「プライスコレクション」とは若冲のコレクターとして世界的に知られる米カルフォルニア 在住のジョー・プライス氏 (Joe D. Price) の江戸絵画コレクションである。石油パイプ ライン敷設で財をなした父親は、20世紀建築界の巨匠フランク・ロイド・ライトとも懇意 で、オクラホマにある自社ビルPrice Towerはライトの設計によるもの。 御曹司であるプライス氏は、浮世絵の収集でも知られるライトから直々に日本美術について 教示を受け、1950年代から江戸絵画蒐集に邁進。当時、日本国内で見向きもされなかった 若冲・其一を始め、長澤蘆雪・曾我蕭白らの作品を古美術商や旧家の蔵からあり得ない安値 で買い取り、今ではコレクション総数は1,000点あまりにも及ぶ。 ロサンゼルス・カウンティ美術館(LACMA)の日本館は、プライス氏が500万ドルの寄付を 投じて建設され、自身のコレクションから掛軸・屏風絵など300点以上が収蔵されている。 若冲が中核を成すコレクションは2006年に日本を巡回し、観客動員数は延べ100万人を 超えるモンスター級の美術展になった。 若冲の超絶技巧を目の前にして圧倒された衝撃ももちろんあったが、それよりも 「国宝級の作品をどうして日本人はいとも簡単に手放してしまったのか、信じられない!」 という衝撃の方が強かった。日本人の美術を見る目がトコトン節穴だったのだろうか。 プライス氏は財力のみならず、日本美術の伝統や定型に捉われない独自の審美眼を持ち合わ せていた。1953年、24歳だったプライス氏がNYの古美術を扱うギャラリーで初めて目に して買い求めた一幅の掛軸は、若冲を名乗る以前の「景和」を署名に用いていた若かりし頃 (30代前半から半ば)の水墨画『葡萄図』だったことからしても、正統にして異端の絵師 若冲の画力を見極めていたことが分かる。 今でこそ爆発的なブームが起こり、その人気が不動のものとなった若冲だが1950〜60年代 当時の日本において、若冲は無名で美術界で見過ごされていた存在であった。目先の利益に 走って廉価で海外コレクターに売り飛ばしてしまう古美術商やギャラリー、率先して江戸 絵画収集に乗り出さなかった美術館の怠惰、日本美術研究の遅れ、原因は様々あるにせよ、 日本国内で評価できずにいる間に、若冲を始めとする江戸絵画が海外流失の憂き目に遭った のは、その類希なる技巧と豊かな表現力、芸術性の高さ故、必然だったといえる。 真偽の程は分からないがLACMA日本館の根付コレクションにまつわるエピソードがある。 アメリカ人の弁護士で根付蒐集家のレイモンド・ブッシェル氏 (Raymond Bushell) の 死後、美術館に寄贈された800点以上の根付コレクション。戦後に米軍と共に来日した ブッシェル氏は、物資不足による貧困にあえぐ地方の民家の戸を一軒ずつ叩いて回り、 僅かなパンやウィスキーと交換して、根付をごっそりかき集めて米国に持ち帰ったそうだ。 この話は、とある根付ショップのオーナー談なので、かなり信憑性のある話だと思う。 ブッシェル氏は根付研究家としても有名で著書も数冊出ている。根付への並々ならぬ情熱と 知識を持ち、精緻な装飾を施した日本の根付を生涯敬い、大事に保管してきた。遠く太平洋 を隔てたロサンゼルスとはいえ、今日ではLACMA日本館の美しい展示室でいつでも根付を 鑑賞できるのは有り難い話である。一方で家宝だった根付を、貧しさ故に二束三文で手放さ ざるを得なかった人々の無念さを思うと複雑な心境になる。 若冲もプライス氏が蒐集に乗り出さなかったら、作品は海外に四散するか、日本国内は 民家の蔵か美術館の保管庫で埃をかぶったまま埋もれ、再び日の目を見る日は来なかった かも知れない。プライス氏のお陰で若冲の再評価や研究が進み、まとまったコレクションは 最良の保存状態で米西海岸に保管されているのだ。有り難い話である。頭では分かっている のだが「日本美術の至宝が里帰り」なんて文言を見ると、なんだか微妙な気持ちになる。 日本の現代美術を巡る環境は、米国に比べると脆弱で整っているとは言い難い。新しい作家 を認めて育てていく土壌を、もっと言うならば金銭的な価値、芸術品としての価値、将来の 遺産としての「日本現代美術の価値」を日本人がもっと強く認識して大事にする土壌を、 美術館・ギャラリー・コレクター・アート市場の連携で作り出していって欲しい。 海外流失は別に悪い話ではない。アート市場のグローバル化でビジネスは拡大・発展し続け ている (日本はイマイチ波に乗れていないが)。国内外問わず、最終的に真価を認める コレクターや美術館に作品が渡ればそれで良い。ただし海外で先に評価される前に、せめて 自国の芸術作品くらい手前できっちり評価しろ、ということだ。「うちは活きの良い魚を 輸出してますよ」と胸を張るのと「逃した魚はデカかった」と落胆するのでは、意味合いが まるで違う。欧米からトップダウンの形で美術の価値を押し付けられる状況に甘んじず、 アートの価値を自ら創造し発信していく力が、今の日本のアートシーンに求められている。 ここでお知らせ: 東北に今春、プライスコレクションが「里帰り」します。 『若冲が来てくれました—プライスコレクション 江戸絵画の美と生命—』 とはいえ、若冲の動物画@細見美術館も愛くるしい。 #
by azzurrotree
| 2013-01-16 19:52
| Japanese Art/日本美術
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