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オープニングの案内が来るまで、山本基というアーティストのことは知らなかったが、
Laband Art Galleryのトップページに掲載された写真に魅せられた。 展覧会タイトルは"Return to the Sea"。ソルトワークとあるので白いレースの正体は 塩だと分かる。壮大なスケールを予感させる展覧会だ。 アーティスト本人も来るということで、オープニングに行って来た。 Laband Art GalleryはLoyola Marymount University(ロヨラ・メリーマウント大学) の敷地内にある。私立4年制大学でカトリック系。言語学、映画・テレビ系に 力を入れている。ロサンゼルス都心にあるとはいえ、結構な丘の上に建ち、 周りははっきり言って何もない。とはいえLAX(ロサンゼルス国際空港)も近いし、 サンタモニカ海沿いなので高台からの景色は抜群。 勉強に専念できそうな環境だ。 山本基は塩を使った作品で有名で、部屋の床一面をキャンバスに見立て、 大量の塩を用いて、意匠を凝らしたアートを展開していく。 しかしソルトアートはその場限りの儚い平面表現。時間をかけて丁寧に制作された作品は 展覧会が終了すれば跡形も無く撤去される。永遠に続くものは何も無いという諦念、仏教の 無常観を強く感じる作品だ。 塩を作品に使うきっかけになったのは、脳腫瘍のため24歳で他界した妹の死と向き合う ため。日本人は太古の昔から白いものを神聖視してきた。中でも白塩は神事・仏事に 欠かせない。塩で清め邪気を払う。死者との対話、死者への祈り、家族との何気ない 思い出、さまざまな想いを心の中で整理し、作品に紡いでいく。 長時間に及ぶ孤独な作業は、瞑想に近い。しかし、死者との思い出に閉じこもらず、 作品を作り続けることで今を生きる山本氏の姿勢は前向きだ。 個展やグループ展の経歴を見ると、海外でいち早く注目された感がある。 スピリチュアルな禅の世界観が、海外で高い評価を得ている所以であろう。 キャンパス内にあるギャラリーなので、学生も大勢観に来ていたが、いつもは 騒がしい学生たちも、この時ばかりは神妙な面持ちで作品を鑑賞していた。 アーティスト本人にお会いして貴重なお話を伺うことができた。 チベットの僧侶たちが瞑想しながら極彩色の砂で曼荼羅を描くサンドアートの影響を 受けているのか、という連れのアメリカ人の鋭い質問にも気さくに答えてくれた山本氏。 砂曼荼羅の影響は確かに受けているに違いないが、白一色の潔さは日本人の美意識に 合致する。 塩のインスタレーションに関しては、展覧会の企画時にプラン図を用意するという。 会場の大きさに対して、作品のサイズを予め提示し、塩の使用量も前もって伝える。 ちなみに今回は塩125kg使用で、制作時間は102時間。 プラン図はあるが、会場に足を運び、床の質感や天井の高さ、会場の雰囲気などで、 描き方が変わることもあるので、完成品とは必ずしも一致しない。 図案と実際の作品が全然違うこともあるそうだ。ただ今回のアメリカ巡回展には 「渦巻き」というテーマがあるので、基本そこは変わらない。 作業中に風が吹いたり、くしゃみして塩の模様が吹き飛んだりしないのだろうか、と 思ったのだが、意外に塩は重いそうで、少々の風で飛び散ることはないそうだ。 むしろ「人災」で作品が台無しになるハプニングが多いそうだ。 杖をついたおばあちゃんが気づかず(?)作品の中に入っていってしまったり、 清掃の人がモップでざっと掃いてしまったり。バッグやカメラを落とされるなんて、 しょっちゅうらしい。 アーティスト本人が会場にいる時は修復できるが、いなかった時は「まあ、その時は しょうがないですね」と爽やかに答えてくれた。山本氏、諦念の人だ。 今回もオープニング当日から、早速誰かがコインを落として転がっていってしまい、 作品の端っこが欠けていた。もう多少の損傷だったら直さないそうだ。 展示終了後は観客と一緒に塩を集めて海に還すイベントが行われる。 価格高騰でアート市場に翻弄される現代美術とは対極にある、山本基の形に残らない アート作品。コレクターの所有欲から遠く離れ、芸術家のエゴも放棄した、形を留めない 作品は、一回限りの貴重な体験として鑑賞する者の記憶に長く留まるに違いない。
by azzurrotree
| 2012-10-12 01:16
| Contemporary/現代美術
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Comments(2)
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