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前回エントリの続き
著者が初めて高村総二郎の作品に出会ったのは、今年の正月明け。場所は新宿の 日清食品本社1Fである。元旦の全日本実業団駅伝で優勝した日清食品グループを祝福する スタンド花がロビーにずらり並び、正月早々、殊更めでたい雰囲気に包まれていた。 しかし年始で人はまばら、人気の無いロビーの奇妙な明るさがやけに印象に残っている。 商談スペースには、スーツ姿のビジネスマンが1組だけ、なにやら真剣な表情で 話し込んでいる。と突然、視界の隅に飛び込んできたのは巨大なCUP NOODLE?! 日清食品ホールディングス蔵) ウォーホル? でもこんな作品は見覚えが無い。近寄ってみるとパネルに「高村総二郎」と 作家名が。お堅い商談スペースに、この人を食ったようなポップアートが並列する光景は 思わず笑いを誘う。アメリカ人の食生活の象徴としてのキャンベル・スープを、日本に置き 換えるとカップヌードルになるという視点がユニークだと思った。 しかしウォーホルと決定的に異なる点は、高村氏の作品はシルクスクリーンの大量生産では 無く、日本画の手法を用い、正確かつ丁寧に描き出した1点ものだということだ。ずいぶん 制作時間も掛かったに違いない。大真面目にバカバカしいことをするアーティストもいた ものだと感心したのを覚えている。 時は移り、9月下旬。京都に戻りMaeda Hiromi Art GalleryのHPで過去の展覧会を チェックしていると、初夏に開催した『SENSE展』に高村総二郎氏の名前が。 ただ作風が全く異なるので、初めは全然気がつかなかった。刺青がテーマだという扇子は、 本当に刺青を刺すように絵付けが施され、作品としての質も高い。試しにインターネットで 高村氏を検索すると、いきなり『刺青シリーズ』の絵が出てきて度肝を抜かれた。しかも、 説明が無かったら絶対に写真にしか見えない完成度の高さ。 デジタルカメラが普及した昨今、写実的に絵を描くことの意義に疑問を抱いていたが、 高村氏の刺青シリーズにはそういった理屈抜きに、鑑賞者を絵に引き込む技量がある。 この凄みのある美しさは、妥協を許さぬ完成度の高さ故か、それとも人の道を外れて 生きる覚悟を彫りつけた刺青のなせる業なのか。ちなみに「モデル」として高村氏の アトリエに来てもらった方々には、描き上げた絵をお礼として進呈するそうだ。 LAではタトゥーはただのファッションだが、日本の刺青の芸術性は高く評価されている。 アメリカなら日本独自の倫理や道徳は全く意味を成さないので、コレクターたちは喜んで リビングルームや寝室に刺青シリーズを飾るだろう。 刺青の絵に目を奪われてしまったが、遅れ馳せながら高村氏のHPをチェックすると、 唐突にカップヌードル・シリーズが出現! 刺青とカップヌードルの二つの点が著者の 頭の中で「高村総二郎」として像を結んだ瞬間であった。しかし、この作家はシリーズ毎に 作風がまるで異なる。同一人物として像を結ばないのも当然だ。 個人的に傑作だったのが、畳シリーズ。 45.5×45.5cm) 銀閣寺と、旧高村邸の4畳半。 サイズは実物大で1畳の制作日数1ヶ月。ふたつの作品完成に9ヶ月かかった計算になる。 畳の目を細部に至るまで鮮鋭に描写。旧高村邸に至っては、経年により黄色く日に焼けた 畳に目を凝らすと、テレビやゴミ箱を置いた箇所は緑色に跡が残り、高村氏がよく座って いた辺りは白んでいたりと描写が細かく、生活感が滲み出ている。 決して広いとはいえない4畳半だが、その昔、書画骨董を愛で、華を生け、茶を嗜んでいた 畳の間は、現代ではCDや本、フィギュア(?)などをコレクションするひとり暮らしの空間 であろう。趣味は変われど、狭い部屋で好きなことに没頭したり、考え事をする時、そこは 自分だけの世界。物理的な4畳半以上の広がりを持つ空間に変わる感覚は今も昔も同じだ。 高村氏の作品解説が深い。 畳シリーズは展覧会で展示したところ、あまりにリアル過ぎて大半の人は本物の畳の インスタレーションか、ごちゃごちゃした荷物を隠すつい立てだと思ったらしい。 思い出したのが、LA現代アートの巨匠、エド・ルーシェ (Ed Ruscha) だ。 ガソリンスタンドというありふれた光景を、大真面目に描いたシリーズで有名だ。 強調された遠近法に迫力を感じるが、やっぱり可笑しい。 大きなキャンバスに実物大のスパム缶を描いた"Actual Size"という題の作品も笑える。 真剣にバカバカしい絵を描くのは共通しているが、絵の技量は高村氏の方が遥かに上だ。 稚拙な現代アートは飽きる程観てきたが、このワカラナイといわれている現代アートの 領域に、絵の技術が伴えば最強である。真面目と滑稽は紙一重、日本画という伝統的な 絵画表現を離れずにコンテンポラリー・アートを描くことは大変な強みになるに違いない。 高村氏の作品はLAのゆるいユーモアも持ち合わせているので、海外でも通用しそうだ。 フローリングの玄関ロビーや、絨毯を敷き詰めた洋間の壁に、銀閣寺の畳の絵が 掛かっていたら、かなり面白いと思う。 最近は肖像画シリーズと題して、政界の大物を描いている。 日本画家だが、日本画の画材にこだわらず、アクリル絵の具や油彩などを用い、 いろいろな表現を試みている。 肖像画シリーズは油彩で、政治家の脂ぎった面構えに似つかわしい。 いろんな組織とべっとり癒着している感じが良く出ている。 どの作品も、構図にそこはかとなく悪意を感じる。 最後に高村氏のプロフィール写真を。 20年来のスーツに身を包み、三島由紀夫然とした 硬派なお姿。高村氏自身が何かパフォーマンス アーティストの様相を呈している。 真面目にアホなことやってます、という作家独特の ポーズと見た。 個展などにも、この堅物ルックで登場するらしいので 展覧会のオープニングがあれば是非またお目にかかりたい。 高村氏のHPはこちら (作品画像提供: 高村総二郎氏。ご協力いただき、ありがとうございました)
by azzurrotree
| 2012-10-19 21:13
| Japanese Art/日本美術
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