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ピカソをして「20世紀最後の巨匠」と言わしめた、画家バルテュスの大回顧展は、タイトルも直球で「バルテュス展」。
東京都美術館での展覧会最終日に滑り込みセーフで鑑賞できたので、次回7月5日から開催される京都市美術館の巡回展Previewとして紹介したい。 バルテュス (本名Balthasar Klossowski de Rola; 1908-2001) といえば少女をモデルにした絵が有名。少女の挑発的な姿態や裸体を描いた作品は1934年にパリで初個展を開き画壇デビューした当時からスキャンダラスだと物議を醸したが、それは今も変わらない。 特に欧米では子供の下着姿やヌードは児童ポルノに直結し、アートといえども厳しい批判にさらされる。この類いの展覧会を欧米で開くなら、ポルノとの違いを明確に説明し尽くさなければ、周囲は納得しないだろう。 日本のバルテュス展広告は、パンツ丸出しの少女をモチーフにした「夢見るテレーズ」。さぞや抗議が殺到したことだろう、と思いきや東京の展覧会は最終日ということもあって大盛況。大勢の人々が詰めかけ、時にエロティックと評されるバルテュスの絵一枚一枚に真剣に見入っていた。 数日後に、とある美術館のキュレーターと会食をした際にバルテュス展の話題を向けると「ああ、欧米は大人の裸には寛容ですけど、子供の裸には厳しいですから」と言われた。逆に日本では、大人の性愛文化を描いた純国産の春画や、美しい成人女性モデルのヌード写真で知られるヘルムート・ニュートン (Helmut Newton) が美術館で展示されることはまずないだろう、第一スポンサーがつかない、とのこと。 そういえば全米TV放送が決まった日本の国民的アニメ「ドラえもん」も、しずかちゃんの入浴シーンをカットするかどうかで揉めているくらいだから、検閲の厳しさが伺える。幼児が性愛の対象になりかねない表現は断固許さないというアメリカの毅然とした態度は、当然バルテュスの作品にも向けられる。 ニューヨークにあるメトロポリタン美術館 (The Metropolitan Museum of Art)では、アメリカでは実に30年ぶりのBalthus個展となる "Balthus: Cats and Girls—Paintings and Provocations" が2013年に開催されたが「猫と少女:絵画と挑発」というタイトルからして可笑しい。 つまり「無害な猫と無垢な少女が主題ですが、いくつかの絵は挑発的かもしれません」と最初に断っておくことで、想定されるあらゆる非難を回避したい美術館側の周到な用心深さを見て取れる。会場入り口には「展示されている絵画の中には一部の方を不快にさせる場合もございます」と注意書きを立てる念の入れよう。 しかしメトロポリタンがバルテュスに神経を尖らせるのも無理はない。 例えばフランス・ボルドーの5大シャトーのひとつであるシャトー・ムートンは1945年からワインラベルのデザインを毎年異なるアーティストに依頼している。ピカソ、シャガール、ウォーホルら一流の画家たちが名を連ねるムートンに、1993年に絵を提供したのがバルテュスであった。 しかし少女の裸体のデッサンが児童ポルノだと、カルフォルニアの性的暴行対応チーム (Sexual Assault Response Team) なる団体から抗議され、仕方なくアメリカ向けの輸出ラベルだけは無地で出荷し、この年だけ2種類のラベルが混在することに。皮肉なことに今ではどちらのラベルも貴重なコレクターズアイテムとして市場で高値で取引されている。 また最近では、ドイツのフォルクヴァンク美術館 (Museum Folkwang) で、バルテュスが晩年デッサンの代わりにポラロイドカメラでモデルの少女を撮った写真展が2014年4月に開催予定だったが、作品が小児性愛だと地元の新聞に報じられ、市民からの抗議もあり、ドイツでの展覧会は中止に追い込まれた。 このバルテュスのポラロイド写真展の仕掛人は現代アート・シーンを牽引するガゴシアン・ギャラリー (Gagosian Gallery) 。メトロポリタン美術館のバルテュス個展に合わせて、美術館から数ブロック離れたガゴシアン・ギャラリーで2013年9月から2014年1月にかけてポラロイド写真155枚が展示された。同展は現在「バルテュス最後の写真:密室の対話」 (The Last Studies; Balthus in Tokyo)として、東京の三菱一号館美術館で展示中だ (2014年9月7日まで)。 前置きが長くなったが、バルテュスを取り巻く状況や日本と海外の温度差がお分かりいただけたと思う。しかし個人的にバルテュス展は「死ぬ前に観ておきたい3大美術展」のひとつだったので、感慨もひとしおである。 バルテュス展が必見である理由として、作品のほとんどが個人蔵であるために展覧会の実現はこれまで難しいとされてきた。いくつかの代表作が展示されなかったのは残念だったが、それでもこれだけの作品数が一堂に会するのは、かなり貴重な機会であることは間違いない。 スキャンダラスな1934年の初期作品「ギターレッスン」(バルテュスは後に功名心と金を得るために描いたと認めている) や、ウラジーミル・ナボコフの衝撃作『ロリータ』の表紙に「猫と少女」(1937) が不本意に使われたことで、ロリコンの烙印を押されたバルテュスであったが、自分の絵画が少女のエロティシズムと解釈されることに憤慨していた。 確かに誤解されている面も多い画家である。日本の展覧会図録の中で児童ポルノとの線引きがどこにあるのか説明し尽くされているとも思えない。しかしバルテュスの美意識や少女を描き続ける理由は、展覧会で実際に作品に触れることで、またバルテュスが生前に語った自身の絵画や芸術に対する思想を知ることで、自ずと見えてくるのではないだろうか。 ということで前置きが長くなり過ぎてスミマセン。 本題の展覧会previewは次回に続く……。
by azzurrotree
| 2014-07-03 19:29
| Paintings/西洋絵画
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