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京都にも待望の春画展が巡回してきたので、細見美術館に前期と後期の2回、足を運んできた。
春画展@細見美術館 2013〜14年に大英博物館(The British Museum)で開催された大規模展覧会 "Shunga: Sex and Pleasure in Japanese Art" 春画の持つ文化・歴史・芸術的な価値を高く評価され、大好評を博した。 日本でも東京のとある有名な美術館に企画展を持ち込んだが、主催する大手新聞社やスポンサーは土壇場で降りるわ、その後も都内の主要美術館や商業施設に軒並み断られ続け、暗礁に乗り上げているところを、細川護煕元首相が名乗りを上げ、細川家の私設美術館の永青文庫という小さな箱でようやく開催に漕ぎつけたという、曰く付きの展覧会である。 京都展の特別サイトを、しかし注意深く読むと「大英博物館の作品は出品されません」という断り書きが。見落としそうなくらい小さな字で、なかなかトリッキーである。細見も私設美術館で箱が小さいので、展示内容が貧相だったりしないか不安になったが、蓋を開けてみれば期待を裏切らない充実ぶりだった。 しかも混雑ぶりは予想以上、細見美術館開館以来の来場者数ではないだろうか。 ちなみインターネットの時代では、ボカシを入れるのは春画ではなく、人の顔なのだ) 会場内も大変な混雑ぶり。大学生と思しきカップルや女子学生の友達同士から(一応18歳未満は入館禁止)、高齢のご夫婦や茶飲み友達のおばさま同士、おじさまお一人様まで、老若男女、幅広い年齢層で賑わっていた。 「公の場での春画の展示は長らくタブーだった時代を経て、日本の美術館で展示が解禁になったのは感慨深いものがある」と語るのは、詩人で日本文化研究家のジョン・ソルト氏(John Solt:北園克衛研究でハーバード大学より博士号取得。Edwin O. Reischauer日本研究所研究員)。源氏物語の平安時代から、江戸時代の文化・風俗、戦前戦後のアートまで、研究分野は広範多岐に渡る。 予備知識が無くても春画は十分楽しめるが、ソルト氏曰く、絵の中に散りばめられた記号を読み解くと、春画をより深く理解できるとのこと。 大きな春画屏風で、一見すると女が鎧武者に組み敷かれているように見えるが、男の甲冑の一部がめくり上がり、交合部が露わとなる仕掛けになっている。 写真からは分かりにくいが、女性の唇が緑色なのは恐怖を表現しているのではなく、玉虫色に光る笹紅という、上方(大阪)で流行した当時の最先端ファッション。モードなゴシック調メイクである。 分かりやすい記号としては、着物の柄や調度品の描き込みで四季が分かるところか。 春なら桜。猫の発情も春ならではの風物詩。着物の色味が繊細でグラデーションが美しい。 夏は蚊帳。冷房もない時代で暑いのは分かるが、ずいぶん開けっぴろげである。 秋は月見で、冬は炬燵が懐かしい 歌川国芳の近江八景のパロディ「逢見八景」の中でも、特に滑稽かつ不思議な絵がこちら。 くしゃくしゃになったちり紙は、この絵に限らず多くの春画の中に登場するが、これも記号のひとつ。丸められたちり紙がひとつ落ちていれば行為が1回終了。3つ落ちているので3回戦終了で、ただ今4回戦突入中?! ずいぶんお励みなのは分かるが、そこでお茶するか?と思わず突っ込みたくなる。 しかも後ろに脱ぎ捨てられた自分の着物を見やっている。左上にかかる絵は三井寺のようだ。ここで性行為は「三井の晩鐘」の鐘突きに例えられている。「夕刻の鐘も突いたし、そろそろ帰り仕度でもするか」という感じだろうか。女が着物の袖を噛みながら、なぜか引き出しのような箱を抱えているのが可笑しい。 この絵には実にいろいろな記号が散りばめられているのだが、半分くらいしか読み解けなかった。 春画では男女ともに性器が極端に大きくデフォルメして描かれている。 一般的に春画はユーモアやパロディといった笑いの要素満載で「笑い絵」と呼ばれているが、ソルト氏は春画の性器が大きく描かれている理由はそれだけではないと話す。 「性的な快感が高まり、全身が性器になったような感覚を表現しているのではないか」と斬新な見解を示してくれた。「性器の誇張=エクスタシーの描写」、つまり写実を離れた心理的リアリズムであるというソルト氏の鋭い指摘に、筆者は思わず膝を連打。これまでの春画学術研究でも発表されていない新規の考察ではなかろうか。 ほとんどの春画が着衣のままで、全裸の春画というのは少ない。 版画の販売促進を考えると、手間は掛かるが全裸よりも、着物の彩色や柄を丁寧に書き込んでカラフルな方が売れ行きが良かったのだろう。男性だけでなく、女性も手にすることから、呉服屋の宣伝としても使われたそうだ。今で言うところのファッション誌の役割も担っていた。 それから布団の歴史を考えると、江戸時代でも綿はまだ大変貴重な時代。 綿が詰まった布団は今でいう車一台買えるくらい高価だった。花魁はパトロンから進呈された敷き布団を何枚も重ねて、寵愛ぶりをアピールした。 庶民はもちろん買えない値段だったので、着物や夜着を上から掛けて寝ていたようだ。 あとはチラリズム。全裸よりも隠した方がやっぱりセクシーというのは今も昔も変わらない。 謎の絵師として知られる写楽以外、江戸の絵師はほとんど全員が春画を手がけている。摺師や彫り師といった職人も、もちろん一流。 春画とは、浮世絵の最高峰の技術の粋を結集した芸術作品なのだ。 現代人が持つ性意識の既成概念をひっくり返す江戸時代のおおらかな性に驚嘆。春画展が予想以上の面白さだったので、第2弾へと続く。
by azzurrotree
| 2016-03-31 23:30
| Japanese Art/日本美術
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