Photo by John Solt
検索
カテゴリ
全体 LA Art / LAアート Photography/写真 Contemporary/現代美術 Japanese Art/日本美術 Paintings/西洋絵画 Architecture/建築 Sculpture/彫刻 Movie/映画 Books/装幀 Best 5 of the Year! Articles/掲載記事 Others/その他 Fashion / ファッション 未分類 タグ
LACMA(17)
シュルレアリスム(15) Getty(12) 高村総二郎(9) 大家利夫(7) 澤田知子(6) 装幀(6) Hammer Museum(6) Frank Gehry(6) 山本悍右(5) PST(5) 久保田昭宏(4) ランド・アート(4) Rose Gallery(4) ハロウィーン(4) 北園克衛(4) バルテュス(3) ケネス・レクスロス(3) 春画(3) 山本基(3) 以前の記事
2021年 11月 2021年 09月 2020年 10月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 03月 2018年 02月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 01月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 06月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 01月 2011年 12月 最新の記事
フォロー中のブログ
最新のコメント
メモ帳
最新のトラックバック
外部リンク
ライフログ
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
前回に引き続き、森村泰昌の大規模個展「自画像の美術史『私』と『わたし』が出会うとき(The Self-Portraits of Yasumasa Morimura:My Art, My Story, My Art History)@国立国際美術館を紹介したい。
どの作品も面白いが、特に笑いを堪え切れなかった作品を厳選してみた。 「日本の前衛精神は眠らない:The Spirit of the Japanese Avant-garde Never Sleeps」と題された部屋は、日本の前衛芸術家へのオマージュになっている。 まず初めに、日本では知らない人はいないが、海外ではからきし知名度が低い岡本太郎へのオマージュ。 オリジナルの岡本太郎作品『傷ましき腕』。 『傷ましき腕』(1936/1949)は岡本が戦前パリ留学中に描いた代表作。帰国後、戦災で焼失。戦後に再制作された本作は、戦前の制作時とは別の意味合いを帯びる。第二次世界大戦で壊滅的な打撃を受けた日本。灰燼の中から何度でも立ち上がってみせる、と戦後復興を誓う日本人の精神と、岡本自身の旧体制の日本画壇への反発、新しい芸術を生み出す挑戦が見事にシンクロしている。 頭部がなぜか赤いリボンになった、インパクトある作品のモデルは岡本自身と言われている。 リボンに扮した森村が、下から浮かび上がる岡本の顔と見つめ合う。前衛の部屋は照明を落として、ほぼ暗闇なので、太郎の顔がちょっと不気味。 続く短い映像作品2点は、いずれも違う意味で体を張っている。 1954年に結成された具体グループの紅一点である田中敦子のパフォーマンスアート「電気服」。 関西で結成され、70年代まで続いた実験的なハプニング、パフォーマンスアート、インスタレーションは確かにセンセーショナルだったが、世界的に見ると局地的で小規模な活動であった。それが数年前から「もの派」とともに欧米の美術館で大規模な回顧展が次々と開かれ、あっという間に日本の主流芸術として受け入れられるようになったのは驚きである。 田中敦子の電気服は白黒写真でしか見たことが無かったが、森村のオマージュ映像で色鮮やかな原色が一気に目に飛び込んできたのは衝撃的。 感電の危険性も顧みず、関西芸人顔負けの体を張ったパフォーマンスを見せてくれた森村に爆笑。電気が点滅するパチパチという音が、天井に設置されたスピーカーからアラレのように落ちてくるのが心地よい。暗い部屋で最小限の音に耳を澄ませながら、小林幸子並みのド派手な極彩色の衣装を眺めるギャップが良い。 意外なチョイスだと思ったのが前衛舞踏家の大野一雄へのオマージュだ。 今の日本の若い世代はたぶん知らないだろうが、日本発の舞踏は海外では高い人気を誇る前衛芸術。他のダンスと違い、舞踏はステップを踏まず、リズムを取ることもない。誤魔化しがきかない究極の身体表現である。 森村が挑戦したのは、大野一雄が70歳を超えて発表した代表作「ラ・アルヘンチーナ頌」を再構成した映像作品。100歳を超えても踊り続けた大野一雄の、老いてもなお日々の鍛錬で一切の無駄な肉を削ぎ落とした体躯、研ぎ澄まされた動きを、今さらどうにも再現できるはずもない。 しかし再現できないなりに、ひとつひとつの表情、指先、つま先の動きにまで込められた気迫で大野一雄に成りきってみせる森村のパフォーマンスは、真剣にやればやるほど、なぜだか人間の躰に宿る滑稽さや可笑しみ、永遠ではない人間の脆さや儚さまでも体現しているように見えた。最初は笑ってしまったが、最後は拍手を送りたい気持ちにさせる渾身の力作。 そしてフリーダ・カーロの多難な人生を祝福する花輪シリーズは、祝祭の雰囲気満載だ。 裸のヌード・モデルとチェスに興じるマルセル・デュシャンのパフォーマンスへのオマージュ作品。 最後はダークなカラヴァッジョの作品で締めくくりたい。 最初この絵を見たときは思わず吹き出してしまった。 400年前のオリジナルのメデューサよりも、あまりにも鮮烈な色が仰々しい印象を与えたからだ。それに自画像シリーズにカラヴァッジョを加えるのは渋いというかダークな選択である。 しかし長編映像の解説を見た後、再びこの絵の前に立つと印象はがらりと変わる。カラヴァッジョはナイフを絵筆に持ち替えて、絵の中の人物や聖人を殺害することで殺人の欲求を満たしていたという森村の解釈、そして行き着く先は自分自身の破壊。実際、カラヴァッジョは殺人を犯し逃亡、投獄され死刑宣告まで受けた。自身の身の破滅を予見する自画像なのだ。 絵の中とはいえ、自分自身を殺すのは勇気が要るし、なにより凄まじいエネルギーを消耗するに違いない。カラヴァッジョに扮した自分を殺す作品を作った森村の意図を考えるに、体を張って命を削る作品を作り続けるという決意表明であり、古い自分を破壊して新しい作品を作り続けるという意思表示なのかもしれない。
by azzurrotree
| 2016-05-02 04:34
| Photography/写真
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||