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前回に引き続き、恩地孝四郎展@和歌山県立近代美術館を紹介したい。
今回は筆者のお気に入り作品をいくつかpick up。 まずは1934年に出版された『飛行官能』。 1928年7月に大阪朝日新聞社の企画「北原白秋の柳川への空の旅」に同行した恩地が、初めて飛行機に乗った時の体験を元に、自身の詩と木版画、プロカメラマンによる写真を組み合わせた詩画集だ。 今見ても斬新なレイアウトとデザインを、戦前に出版していることにまず驚く。そして飛行機に初めて乗った時の感動を、詩、写真、木版画と様々な表現を用いて視覚化して、形にできる恩地の才能が羨ましい。 奥付に価格250円とあり、思わず「安いなぁ」と言ってしまったが、一緒に行った先生が「いやいやこれは大変な高値ですよ」と教えてくれた。 後で調べてみると、1935年当時の給与所得者の平均年収は712円とあるので、250円は普通の会社員の給料4、5ヶ月分に相当すると判明。こんな薄っぺらい本が婚約指輪より高いなんて!この価格設定はしかし、そもそも売る気があったのか疑問。 この本の展示を見てすぐさま頭に浮かんだのが、北園克衛がデザインを担当した『Japan's Bicycle Guide』(日本自転車工業会刊)だ。日本の自転車や部品の技術力の高さを宣伝するために作られた、外国向けカタログだが、ただ自転車のパーツを並べただけの真面目なカタログで終わらせないところが北園らしい。ひとたびページを繰るとセンスの良いグラフィックやデザインが満載で、自転車のパーツもアートのようにレイアウトされている。なぜかページ途中に自転車と全く関係の無い抹茶茶碗や日本庭園、着物を着た女性などが出てきて、ウケ狙いなのか遊んでいるのか狐につままれた気分にさせられる不思議なカタログだ。今は当然ながら希少本で高値が付いている。1950年代のカタログなので、もしかしたら北園は自転車のカタログを制作するにあたり、恩地の『飛行官能』を参考にしていたかもしれない。そう思うと何かすごい発見をしたようで『飛行官能』の展示の前でひとり興奮してしまう。 恩地は、この飛行体験の感動を1938年の木版画「空旅抒情」シリーズでも再現している。 滑走路を飛び立つ飛行機のスピード感、エンジン出力のパワーを、極限まで削ぎ落としたミニマリズムの表現で描いていて秀逸。 飛行機の窓越しにふわふわ漂う雲、上空から陸や海を見下ろす感じが、高度三千の浮遊感を上手く演出している。 着陸も大胆で潔さすら感じる表現が好ましい。 恩地は1930年代にドイツから日本に入ってきた新興写真の潮流も、しっかりキャッチしている。 技術的にはいろいろ挙げられるが、極端なクローズアップも新興写真の特徴のひとつだ。日本のシュルレアリスムの草分け、写真家の山本悍右の作品にも、半分にスライスしたイチジクの接写 (『無題』1933年)がある。白黒写真なのに、ぬらぬら光るイチジクの断面が艶かしく感じられる。一方、恩地が撮るパパイヤや南国の花の接写は、どこか清楚さが漂う。 外国から次々と入ってくる表現を貪欲に取り込み、日本の芸術家たちが切磋琢磨し合って日本美術の新しい時代を切り開いた1930年代という時代は、確かに熱かった。 今回の展示で一番驚いたのは、恩地がフォトグラムの技法を用いた作品を手がけていたことだ。 フォトグラムとは、印画紙の上に直接オブジェを並べて感光させる「カメラを使わない写真」で、これも1930年代に入ってきた新興写真の流行りの技法のひとつである。試しに作ってみたというレベルではない。完成度の高さに驚かされる。構図の美的さというべきか。 フォトグラムに関しては制作年不詳ということで、作品数も少ない。万が一、戦前1930年代の作品だったら驚愕である。しかしどうやら、恩地が戦後に始めたマルチブロック・プリントの発想は、このフォトグラムの技法から得たようだ。木版を彫る代わりに、葉っぱや木材を直接紙に転写するマルチブロック・プリントは確かにフォトグラムの技法に似ている。 このふたつの技法を恩地は同時期に試していたようだ。自らを版画家と位置付けていた恩地にとって、きっとフォトグラムは創作版画を作る上での練習台でしかなかったのだろう。 前回の恩地孝四郎のブログを読んでくれた読者の方から、貴重な写真をいただいたので、併せて紹介したい。 図録に掲載されている恩地の写真は晩年に近い感じだが、この写真はもう少し壮年に近い年齢だろうか。図録にも掲載されていない貴重な写真だ。若くても年を重ねても恩地孝四郎は渋めでダンディ、格好良過ぎる。 そして杉並区在住の版画家として、杉並区章のデザインを依頼され、制作している。 杉並区役所の職員の皆さんは、このバッジをつけて仕事に励んでいるらしい。杉を見事にデザイン化。無駄のないデザインに惚れ惚れする。急に杉並区に住みたくなってきた。
by azzurrotree
| 2016-06-19 01:03
| Japanese Art/日本美術
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Comments(2)
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by
金原 教子
at 2016-06-22 13:32
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お久しぶりです 今回も すばらしい記事です!
杉並区のマーク、かっこいいですね! このころは デザインを 盗作したとか された! とか・・・ めったに なかったのでしょうね 和歌山・・・ 一度は いってみたいです。
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by
azzurrotree at 2016-06-22 19:19
のりこさん、いつもありがとうございます。和歌山、日帰りはシンドイので、私もいつかゆっくり観光に行ってみたいです。
美術の世界において、盗作の概念を定義するのは難しいですね。アーティストなら誰もが皆何かしら影響を受けているわけですから。 過去のアーティストも偉大なアート作品も美術は地続きみたいなところがあります。いかにオリジナリティーを創出するかが大事になってきます。
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