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米国の写真家シンディ・シャーマン40年のキャリアを総括した大規模個展 "Cindy Sherman: Imitation of Life"(2016年6月11日〜10月2日)@ The Broadを紹介したい。
昨年ダウンタウンにオープンした現代美術館「ザ・ブロード」については次回のブログで詳しく取り上げる予定。 Cindy Sherman (1954- )は自身を被写体として映画、テレビ、広告、名画に出てくる人物に扮装したセルフ・ポートレイト作品で有名な写真家。 展示はThe Broadのコレクションをメインに120点で構成。ロサンゼルスでは約20年ぶりの個展となる。 1980年代からCindy Shermanの熱心なコレクターであるイーライ&エディス・ブロード(Eli and Edythe Broad)。 1982年にまだ無名だったCindy Shermanの作品”Untitled Film Stills”のシリーズを1枚あたり$150〜200(約1万5,000円〜2万円)で購入したことを誇らしげに語るEli Broad氏。今ではその価値は1,000倍に跳ね上がっている。Cindy Shermanの世界最大のコレクターとして、現在127点を所有。自身の名を冠した現代美術館でオープン以来初の企画展がCindy Shermanなのも納得である。 −−人生の模倣−− 展覧会タイトル"Cindy Sherman: Imitation of Life"も、ダグラス・サーク監督(Douglas Sirk)の1959年制作のメロドラマ映画から来ている。 (基本的に以下に紹介する写真作品はすべてuntitled(無題)である) 初期作品”Untitled Film Stills”は、1977年〜80年にかけて制作したシリーズで、アメリカやヨーロッパの1950〜60年代のアートシアター系映画から着想を得ている。 Cindy Shermanの親世代が理想とする典型的な女性性や女性らしさを表現している。モノクロフィルムのクラシックな女優をイメージし、様々な映画の一場面をそれらしく演出しているが、特定のキャラクターを模倣しているわけではなく、社会によって作り上げられた「お決まりの女性像」を総体的に演じている。 とはいえ写真を見ると、ブリジット・バルドーやマリリン・モンローといった映画スターを想起させるキャラクター作りも見られる。 固定概念というのは恐ろしいもので、映画やテレビ、広告に求められる女性らしさは、このシリーズが作られてから40年近く経過した今現在もあまり変わっていないように見える。 これはエンターテイメント産業の上層部がいまだに男性によって支配されている現実と大いに関係があるだろう。米国の映画監督の中で女性が占める割合はわずか9%という統計が2015年に発表されたことは衝撃的ですらある。邦画ですら映画の制作費に数億円かかるが、ハリウッド映画なら数十億円規模の制作費がスタンダードの中、女性監督にビッグバジェット映画を任せられないと、男性中心の保守的な価値観が支配的な上層部が判断した結果である。 Cindy Shermanの”Untitled Film Stills”シリーズは、メディアがいかに男性目線でステレオタイプな女性の美しさを生産し続けているかを鋭い洞察力で描いていて、現在においても(悲しいかな)普遍的なテーマを扱っている点で秀逸である。 ”Bus Riders”シリーズは、15枚セットの作品を1976年当時は実際のバス車内の広告設置部分に展示した。ありふれた光景だが、バスの乗客の特徴をよく捉えていて可笑しい。 1983年にはファッション誌Vogue Paris やHarper’s Bazaarの委託を受けて、ファッション写真を制作している。 垢抜けない服に不器用過ぎる表情はダサさ満点で、ファッション誌が創出するスタイリッシュなファッションとは相反する。 ファッション誌が創り上げる「理想の女性像」という虚構の世界を皮肉る一連の作品は、ファッション誌からの委託を逆手にとって、ファッション業界の体質を見事に批判し挑発しているのだから痛快である。 1988年〜1990年に制作された名画シリーズはルネサンス、ロココ、バロックなどの時代を基調に、様々な人物画を参照しつつ、総体的な古典絵画のイメージを作品に落とし込んでいる。 まがまがしい付け胸が悪趣味ではあるが、これも意図的なデフォルメで、宮廷画家の男性目線によって描かれた白い肌や胸の強調、母性や女性らしさを象徴する古典絵画のモチーフも、シンディ・シャーマンの手にかかると全てがグロテスクなパロディになる。 「日本のシンディ・シャーマン」と評されることもある森村泰昌と比べてみると、森村はいくら扮装して違う人物になりきっても決して悪趣味に転ばない。美と醜の境界線を心得ている。 森村泰昌は女性を演じるからには美しく演じ切ろうという気概、異性に対する敬意が感じられるが、Cindyは女性の「より美しく、セクシーに見せたい」という虚栄心を炙り出し、同時にそれは男性目線の要求を反映させた女性の媚びでもあることを看破している。同性ゆえに容赦ない。 この社会に規定される美は、人々が女性に押し付けるステレオタイプなのではないか、というそこはかとない反発が、彼女の作品のユーモアとグロテスクの合間から鋭く光る。 しかし、Cindy Shermanの名画シリーズの後の展示はどこまでも醜悪に転がり落ちるから不思議である。義肢や人工乳房、人工性器を用いた作品や毒々しいピエロに扮した作品は写真をブログに載せるのも憚られる。 アーティストとして有名になり、作品がオークションで高値で取引されるようになったシンディ・シャーマンの挑発の対象が、悪趣味なマネーゲームを繰り広げるアートコレクターに向けられたのだろうか。 老いをテーマに忍ばせる作品を作り始めてようやく作品が落ち着いてきた感がある。 2010年からは、再び映画の世界に戻り1920年代のサイレント映画を題材にしている。1920年代に流行った細身のドレスやボブカットといったフラッパー・スタイルと呼ばれるファッションを身に纏った往年の女優が年を重ねたらという想定で、自身の老いとも対峙している。エレガントでノスタルジー薫る作品になぜか安堵する。 女性の美、虚栄心、地位、既成概念、アートそのものについても観る者に疑問を投げかけるような作品を作り続けてきたCindy Sherman。アーティストとしてのキャリアを通じて、絶えず世の中のステレオタイプに戦いを挑んでいることがよく分かる見ごたえのある展示だった。
by azzurrotree
| 2016-10-06 20:21
| Photography/写真
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