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ロサンゼルス郡立美術館、通称LACMA(Los Angeles County Museum of Art)にある日本館(Pavilion for Japanese Art)で開催中の粟津潔の展覧会 "Awazu Kiyoshi, Graphic Design: Summoning the Outdated" (2016年10月15日〜2017年5月7日@LACMA)が、なかなかポップ感満載だったので紹介したい。
展示作品は1960年代後半〜1970年代のポスターデザインをメインに構成されている。 粟津潔 (1929-2009) はグラフィックデザイナーとして有名だが、絵画・デザインは独学で学んでいる。戦後のアメリカ軍占領時に、アートが社会に果たす役割について問いを立て、1955年に米軍基地反対闘争のポスター作品「海を返せ」で日本宣伝美術会賞を受賞。1960年代の建築運動、メタボリズム (新陳代謝) の創設メンバーのひとりとして、高度経済成長期の都市計画や建築を提唱した。 絵画、ポスター、映画・演劇等の舞台美術、建築、環境とジャンルを横断する活動で知られ、横尾忠則、宇野亜喜良、福田繁雄らと共に戦後日本のグラフィックデザイン界を牽引した。 展覧会タイトル "Awazu Kiyoshi, Graphic Design: Summoning the Outdated" は、日本の伝統文化や美術、自然観への回帰を唱えた粟津独自の芸術観にちなんで付けられている。「時代遅れなものを召喚する」というサブタイトルを見るとギョッとするが、日本経済が飛躍を遂げる真っ只中の60〜70年代に、粟津はあえて古臭い前近代的なものを作品の中に呼び戻した。亀、鳥、椿や牡丹の花、浮世絵など日本の古典的なモチーフを斬新なデザインに融合させることに成功している。 有吉佐和子の同名小説の舞台化で、嫁姑のバトルというジメジメした話だが、ポスターのショッキングピンクがひときわ目を引く。ストーリーとは一見関係のないカラスをモチーフにしているところが謎である。実在する江戸時代の外科医だった華岡青洲が書いた「スズメやカラスが鳴く田舎の家で慎ましやかな暮らしを好み、贅沢を慎み、医療に邁進するのみ」という意の漢詩に想を得ているのだろうか。嫁姑の醜い諍いに比べれば、喧しいカラスの群れの方がまだ清々しいと言わんばかりだ。 一度見たら忘れられない強烈なヴィジュアルである。英劇作家Arnold Weskerの戯曲で、イギリス労働者階級の幼馴染の親友グループがインテリアショップを起業し成功を収めるも、仲間のひとりの病死を機に、自分たちの成功が労働者階級の生活向上に寄与していないことに気付き、失意を味わうというシビアなストーリー。物質的な豊かさを手に入れた代わりに、世の中を良くしたいという初心を置き忘れてしまった挫折感を、粟津のグラフィックは鋭く劇的に表現している。英国旗のユニオンジャックに顔を包み、ひと突きにされている人物は、友の死を暗示する以上に、中流階級に「成り下がった」主人公たちの高潔な大志の死、英国の階級社会への憤りを象徴している。 他のポスターはビジュアルもストーリーもエログロあるいはグロテスクなので詳しくは説明しないが、インパクト大であることだけは間違いない。 ポスターの縁に色鮮やかな絵をぐるり並べたスタイルは、室町時代にポルトガルから伝わったトランプをカルタ風にアレンジした「うんすんカルタ」から来ている。彩色したフィルムのコマで囲むスタイルや、写真を並べるアレンジも粟津の作品に頻出する。 白黒映画の場面写真や人相図のイラストをフィルムのコマのように並べて彩色するスタイルは、粟津にしては洒脱なデザイン。阿部定の白黒写真を並べてポップアートのように彩色を施している作品もあるが、粟津は何か猟奇的なストーリーに惹かれるのだろうか。 1点だけ横尾忠則の作品が展示されていたが、毒々しいポップな色使いから、浮世絵のモチーフを取り入れているところまで粟津と似通っていて、同時代に活躍したアーティストとはいえ驚く。実験的で、猥雑さや土俗的要素が強いアングラ劇場の雰囲気をよく表しているポスターである。 暗黒舞踏の創始者、土方巽の舞踏公演「バラ色ダンス ⎯⎯ 澁澤さんの家の方へ」のポスター。三島由紀夫の『禁色』を下敷きに、大野一雄と土方が繰り広げる倒錯的でエロティックな「男色絡みシーン」は刺激的だが、横尾デザインのポスターは、からっとした明るさがある。 フランス絵画「ガブリエル・デストレとその妹」のパロディー、背景は葛飾北斎の波と旭日旗、ポスター上に新幹線を走らせているところは新しい物好きだが、下に鮭の水煮缶を配しているところが急に庶民的。西洋と東洋のめちゃくちゃな組み合わせがシュール過ぎて、ユーモア満載である。 粟津も横尾も各作品を深く読み込み理解しているからこそ、独自の解釈で思い切ったグラフィック表現を展開できるのだろう。大胆な色で冒険を試みたポスターは、躍動感あふれるグラフィックデザインに昇華している。 粟津の代表作ともいえるサイケデリック調な作品。アメリカ60年代のフラワームーブメントに影響を受けているのは明らかだが、それにしてもこのサイケ柄のモチーフは粟津のポスター作品、書籍や雑誌の装幀に繰り返し登場する。LSDもマッシュルームもやっていないはずだが、それにしても極彩色のゆがんだ幻覚から生まれたアートに夢中になるとはどうしたことか。すべてフリーハンド(手描き)とはいえ、緻密な線はシラフがなせる業である。どぎつい色彩に何か創作意慾をかき立てる時代のエネルギーを感じたのだろうか。 「現代日本彫刻展」のポスターは粟津節が炸裂である。 ポスターを見る限り「現代彫刻展」という開催趣旨は忘却の彼方。「形と色」のテーマを辛うじて拾っている程度。亀や凧といった古典的モチーフを自由自在に駆使し、自分の趣味に突っ走っている。 人相図と共に関心を寄せる解剖図、そして椿の花のモチーフでひたすら自分の世界に没頭。展覧会の趣旨を無視して一歩も譲らないアーティスト魂は、ここでは少々暴走気味か。 ポップアートやサイケデリックの要素を組み合わせる荒技で、日本の伝統的な芸術や古典的な題材に新たな解釈を付与する粟津潔の作風は、何か泥臭いようなバタ臭いような。昨今の「クール」とは違う、過激で熱い時代のエネルギーをひしひしと感じる。戦後日本の新しいアートを作り上げる無我夢中の必死さがそこにはあったのだろう。 今回の展示は、バークレー大学名誉教授 (建築学) で自身もグラフィックデザイナーのMarc Treib氏がLACMAに寄贈した500点以上のポスター作品のほんの一部である。1960年〜80年代の日本やポーランドの演劇・映画ポスターや、「カリフォルニアデザイン」とも称される米西海岸で展開したモダンデザインのポスターを中心に、Treib氏が長年に渡り収集してきた。LACMA所蔵のMarc Treib Collectionとして、今後も異なるテーマで展示が企画されることが期待される。
by azzurrotree
| 2017-05-05 01:27
| Japanese Art/日本美術
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