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Hammer Museum (ハマー美術館)で開催の"Jimmie Durham: At the Center of the World" (2017年1月29日〜5月7日) は、1970年から現在に至るJimmie Durhamの活動を約200点の展示で紹介する、北米では初の大規模個展。
Jimmie Durham(1940- )はヴィジュアルアーティスト、パフォーマー、詩人、エッセイスト、活動家として活躍。アメリカの先住民チェロキー族の血を引くアメリカ人アーティストで、アメリカインディアンの権利回復運動にも従事している。 そこらで拾った石や貝、捨てられた家具や木材、玩具などのファウンド・オブジェクト(found object)を寄せ集めて作り上げたアッサンブラージュ(assemblage)と呼ばれる立体作品を主に制作しているが、その他にも彫刻、スケッチ、コラージュ、版画、絵画、写真、ビデオ作品、パフォーマンス、詩作など、あらゆるジャンルに興味の対象を広げて活動している。 スイスでアートを学んだ後アメリカに戻り、先住民族の権利運動団体であるアメリカインディアン運動(American Indian Movement)に参加、国際インディアン条約評議会 (International Indian Treaty Council)の代表も兼務し、70年代はアメリカ先住民運動の中核を担う。1980年に両方の団体を辞めて、ニューヨークでアート活動を再開。1980年代にはダウンタウンのアートシーンで脚光を浴びるも、1987年にメキシコに移住、その後1994年にヨーロッパに移る。以来ヨーロッパ各国を転々とし、現在はドイツとイタリアを拠点に活動を続ける。 展覧会のタイトルは「世界の中心で」。どの国に行こうが、地面にポールを1本立てればそこが世界の中心になる、つまり自分のアイデンティティさえしっかり持っていれば、どこでも生きていける、というDurhamの生き様を反映している。どこにいても抵抗の精神を忘れないDurhamは社会の不当や理不尽さに声を上げ、人権保護活動を続け、アートを通じて世界中に訴え続けている。 とはいえ、作品はアッサンブラージュ特有のジャンク感が満載で、深刻さはあまり感じられない。特に言葉と組み合わせた作品に、Durham特有のユーモアを見ることができる。 装飾を施したバッファローと人間の頭蓋骨につけられたパネル説明が可笑しいながらも少々ギョッとする。下に訳出してみる。 アート愛好家に朗報:アメリカ先住民アーティストはもうすぐ死にます! アメリカ先住民アートを格安で手にいれるチャンス! アーティストの死後に作品価格が高騰するのはよくある話、しかも作家のJimmie Durhamは破格の5ドルで作品を販売。ダーハム氏は現在42歳、アメリカ先住民族の平均寿命はなんと44歳!様々な疾患を抱え、いくつかの部族の酋長に命を狙われ、犯罪多発地区に住むダーハム氏の余命を考えると、5ドルの先行投資が数年後に数千ドルになって戻ってくること間違いなし!本物のアメリカ先住民族の素敵な作品を家に飾る喜びを味わう絶好の機会をお見逃しなく。お支払いは現金のみ。 人種に関するパロディと自虐ネタを作品にできるのは、チェロキー族の血を引くDurhamだからこそ許される。 ポカホンタスのパンティに吹き出す。鳥の羽のパンティだなんて、いくらなんでもセクシー過ぎ。 作家自ら身体を張った (?) 裸の全身像。タトゥーを入れるように、身体の特徴や健康状態、生活習慣などについて説明を書き入れている。 最も神話化されたアメリカ先住民族の女性ポカホンタスとして当初制作されるも、後にメキシコ先住民族の女性マリンチェに作り変えた。アステカ帝国征服の際にスペイン側に協力し、長らく裏切りの代名詞のように言われてきたマリンチェ。Durhamは支配する側が常に事実を歪め、白人の征服者たちに都合の良い神話を作り上げてきた問題を指摘している。 ブランクーシの「眠れるミューズ」を連想させる作品だが、炭化したようなボロボロの張り子の紙に、ターコイズの目、貝殻の耳、半開きの口から覗く入れ歯……と前者の金色の夢を見る像と打って変わって、限りなく死に近いイメージである。 続いて「反ブランクーシ」と名付けれた作品。ブランクーシの作品は「魚」や「アザラシ」「鳥」など極限まで単純化した石の造形で知られ、美術館の台座に優雅に鎮座している。Durhamはというと、ブランクーシの作品に似ている形の石を河原から拾って来てダンボールや靴箱を積み上げた台座に乗せただけである。 美術館に展示されているという理由だけで、作品の価値が決まることを疑問視している。裏を返せば、美術館に展示されることのない日常的な物のフォルムにこそ価値を見出すべきなのでは、と問いかけている。 ふたつのガラスの陳列ケースに並ぶ作品。何かの標本のように見えるが、これもファウンドオブジェクト。拾ってきた石を、様々な食べ物の化石に見立てている。 下手な字で書かれた説明が手作り感いっぱい。下記に訳出。 石化したボンボン: ボンボンの味を決めるチョコレート・キャラメル・リコリス・ココナッツ・バニラ・ヘーゼルナッツの配合が、このボンボンを生産した文明を滅亡に追いやったのではないかと、今では科学者たちの間で考えられている。 ボンボンは確かに自分を甘やかす退廃的なチョコレート菓子である。 かつての恐竜のように、人類が突然滅んだ何千年か後に「ベーコンは人間が好んで食べていた保存食の一種です」といった具合に、食べ物の化石のひとつひとつにラベルと説明がつけられ、博物館に展示されるのかもしれない。 "Smashing" (2004) 90分間のビデオインスタレーションを4分にまとめてYouTubeにアップされた動画を見つけたので参考に載せておく。 黒いスーツを着て机に座るDurhamの前に、入れ替わり立ち替わり訪れる人々。それぞれがネックレス、キーボード、ギター、鉢植え、飲料缶、バナナなど持参した物を机に置く。するとDurhamはおもむろに机に置いてある石をつかんで、目の前に置かれた物を思いっきり叩き壊す。そして引き出しから紙とペン、スタンプを出して、押印しサインをした紙を訪問者に手渡す。この一連の作業を延々繰り返すだけのビデオ。 「お役所仕事」の不毛な事務作業を揶揄しているのだろうが、登場人物が誰も笑わず真面目にやっているところが可笑しくて見入ってしまう。 アメリカ先住民族の血を引くJimmie Durhamを始め、アメリカ系アフリカ人アーティストのNoah PurifoyやBetye Saarに共通するのは、原始的なミクストメディア(mixed media)の手法、一般的にゴミだと見なされる素材を用いたアッサンブラージュである。彼らは美術館に展示されている既存の美術作品、つまり白人中心主義的な美術界に非白人として反旗を翻し、価値観の転覆に挑んできたのだ。 たぶん意識的にアメリカから離れていたせいもあって、長年に渡り活動してきたにも関わらず、アメリカのアートシーンにおいて長い間見過ごされてきたJimmie Durham。トランプ政権の元で人種・民族・宗教に基づく差別から自国第一主義の不協和音を奏でるアメリカで、今、彼の作品を取り上げる意味は大きい。 Hammer Museumはいつだって政治や社会問題に一歩踏み込んだ展示やイベントを率先して行う勇気がある。コンテンポラリーアートは政治や社会問題と無関係ではいられないという美術館の姿勢は一貫している。 そして冒頭で筆者が首に巻きつけていたリボンは、ダコタ・アクセス・パイプライン計画から、アメリカ先住民族の権利と自然環境保護について考えるAndrea Bowersのインスタレーションの一環で、Jimmie Durham個展と連動して展示された。 植民地主義の暴力や虐殺は、いまだに差別や社会的不利益という形で先住民族を悩ませている。現在進行形で先住民族の保留地に石油パイプライン建設計画が持ち上がり、水資源の汚染が懸念されている。このダコタ・アクセス・パイプライン計画にトランプ大統領が大統領令を出したことで、再び論争の的となっている。 日本からもみずほ銀行、三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、シティバンク銀行が建設計画に多い所で500億〜600億円という多額の出資をしている事実を知ってしまった! 世界各国の銀行や証券会社が石油の利益に群がる図はあさましい。アメリカ先住民族の権利侵害や環境破壊の問題は、日本も決して無関係ではないのだ。
by azzurrotree
| 2017-05-21 06:31
| Contemporary/現代美術
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Comments(2)
Commented
at 2017-07-04 23:19
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented
by
azzurrotree at 2017-07-05 19:21
Birthdayコメントをいただきまして、ありがとうございます。ご主人様も今年一年健やかに過ごせますように。
石油消費を完全に止めるのは現実的ではありませんが、将来、太陽光や水素、バイオ系燃料など環境に配慮した燃料に切り替わると良いですね。 のりこさんの好奇心の赴くままに、今後もいろいろチャレンジしてください。
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